去年の夏,それまでの勉強の流れから非可換微分幾何の本,
Madore, An Introduction to Noncommutative Differential Geometry
and its Physical Applications, 2nd ed., Cambridge Univ. Press, 1999
を読もうとしていた。
しかしいろいろな事情から20ページも読まないで挫折。
その後,興味と予備知識を増やすことを目的に,
物理の本を読み始めた。
(古典力学は一昨年の5月ころに勉強したので)
電磁気学から始まって年末には相対論の本をよんでいた。
で,年明けからはしばらくの間はこのブログの記事でもちょっと触れたが,
相対論に関係してO’Neillの Geometry of Kerr Blackhole を眺めて,
O’Neill の精緻な研究に驚嘆していた。
2月半ば,知り合いが1冊の本を紹介してくれた。
Nakanishi and Ojima, Covariant Operator Formalism of
Gauge Theories and Quantum Gravity, World Scientific, 1990.
だ。
知り合いの話を聞いて,
「うむ,これだ!」
という手応えを感じた。
で,これに取りかかりはじめたのだが,難しい。
かなり場の量子論に慣れている必要を感じた。
で,面白いテーマなので,目標にすることとして一時保留。
この目標を達成すべく,場の量子論の本を読み始めた。
始めてみると面白く,熱中。
坂本先生の「場の量子論」(裳華房)をできるところだけ途中の計算をしながら,
ざっと読み終わった。
坂本先生の本は続編が予定されていて,
場の量子論全体が書かれているわけではないが,
初等的で私のような素人にもよくわかるように書かれていた。
しかしNakanishi-Ojimaを読むにはまだ足らない。
中西先生ご自身も「場の量子論」(培風館)という本を書かれているのだが,
これにも歯がたたない。
そんな中,場の量子論の数学的な基礎づけはどうなっているのだろう,
とふと疑問に思った。
いろいろ文献を調べて,3月の末,
新井先生の「場の量子論の数学的方法入門」という本に出会い,ざっと眺める。
その最後の章,第13章は「展望」で,
そこに 従来の場の量子論の形式を超える方向の一つとして非可換幾何学を挙げておられた。
んで,去年の夏の場所に戻った!
もちろん去年の夏の興味と,今の興味,知識の量,理解の度合いは全く違うので,
見え方も全く違う感じ。
実際,Connes の Noncommutative Geometry や,
Gracia-Bondia et al., Elements of Noncommutative Geometry の前書きを読みなおしていて,
「えーっ,こんなことを目標にしていたんだ」
などという,ちょーお馬鹿な感想をもったくらい。
冒頭に触れたMadoreの本も見え方がかなり変わった。
広大な世界にワクワクしている。