高校に入って,数学の成績が上がり,
なんとなく得意科目になってきた。
クラスメートも私のことをそういった人間のように
見てくれることが多くなり,なんとなく気分がよくなっていた。
そんな2年生のある日,何かの用事で数学科の部屋に
(多分担当の先生=担任に用事があったのだと思う)
行ったとき,S先生から
「君,数学に興味があるようだけど,こんな本を読んでみないか」
と 横井英夫著「整数論入門―代数学からのアプローチ」(サイエンス社)を
見せられた。
S先生は大学を卒業されてそんなに経っていない若い先生。
自分の勉強をしたいと強く思っておられたようで,
そのついでのような形で,私を誘ってくださったようだった。
もう少し詳しく聞くと,私だけではなく,
2年先輩でその年にJ大の数学科に進学されたK先輩も来るという。
何をどうするのかよくわからなかったが,
数学なら何でもいい,くらいに軽い気持ちで「お願いします」
と答えた。
先生に提示された本は持っていなかったので,本屋に注文。
しばらくして届いた本を読み始めて驚いた。
まったくわからなかったのだ!
第1章のはじめの2節,「集合」と「写像」は教科書にもあったので,
なんとかなった。
しかし第3節の「同値関係」はすっかりお手上げだった。
大学1年生であるK先輩はどうやらよくわかっている様子。
で,二人が議論しているのを,
私は脇でボーッと聞いていた。
二人はそのまま読み続け,ひと通り読み終えたようだったが,
私ははじめの2節で沈没してしまった。
初めてのセミナーは散々だった。
しかしこうやって数学を勉強する方法がある,
ということを知ったのは大きな収穫だった。