収集癖というものはどんなものにもあてはまるのかもしれない。
私の場合はその一つが本の収集。
これまでたくさんの本を買い集めているが,
ここしばらくは数学の問題,
特に今興味があるユークリッド幾何学の問題を集めた本が一番気になっている。
幾何学辞典である。
で,いろいろ調べてみると,どうやら今のところ目に入る幾何学辞典は
長澤,笹部,岩田の3種類ほどのようだ。
もちろん,これ以外にも(特に入試問題を集めた)ものがあるらしいことは,
気がついている。
簡単に触れよう。
- 長澤亀之助,幾何学辞典(明治39年),続幾何学辞典(明治41年)
岩田先生によると,どうやら世界初の幾何学辞典のようだ。
岩田先生は「幾何学大辞典」第3巻,「附録 幾何学書解説」で
A6版としておられるが,B6版の間違いだろう。
手元にあるのは
幾何学辞典の方は昭和6年増訂28版,
続幾何学辞典は大正元年訂正増補10版
なのだが,正編のほうは618ページ,続編の方は758ページの2段組,
正編は2428題,続編は1807題収録されている。これらは時々古本屋に出るようだ。
国会図書館にはデジタル版が公開されている。
リンク集に納めてあるが,ここにも転載しておこう。
幾何学辞典 : 問題解法 長澤亀之助著,幾何学辞典(国立国会図書館デジタル化資料)
幾何学辞典 : 問題解法 続 長澤亀之助著,続幾何学辞典(国立国会図書館デジタル化資料)長澤先生には「平面幾何学小辞典」という著作もあるようなのだが,未入手。
(20数年前,一度持っていたような気がするのだが,
蔵書を整理したときにどうも売り払ってしまったようだ。残念)
平面幾何学小辞典 長澤亀之助著,平面幾何学小辞典(国立国会図書館デジタル化資料) - 笹部貞市郎,問題解法 新撰幾何学辞典(昭和12年),
問題解法 幾何学辞典(昭和31年),
問題解法 幾何学辞典(第2版)(昭和51年)
笹部先生は都合3回幾何学辞典を出しておられるようだ。
新撰はB6版,残り2つはA5版。
新撰は1353ページで3615題,
第1版の幾何学辞典は1363ページ,5059題,
第2版は1072ページ,3927題収録されている。第2版は今でも書店から手に入る。
- 岩田至康,幾何学大辞典全6巻+別巻2,槇書店
詳しいことは他に記事にするつもり。
出版元が倒産したらしく,入手困難。
古本屋に出回っているものは全巻揃いで10万近い値がついている。
もちろん他の2冊に比して一番たくさん問題を収録している。
また,どうやら長澤,笹部が
主にその当時の教科書に収録された問題や,
入試問題などに取材している(例外はあるようだが)のに対して,
岩田先生は Mathematics magazineやThe mathematical gazette他,
専門誌に掲載された問題や和算の問題を収集しておられるようだ。
第1巻p.9〜,第3巻p.536〜,p.574〜に参考にされたらしい雑誌名が挙げられている。
また,各問題には,それぞれの初出と考えられる書誌も
可能な限り調べて記入されているようだ。
日本語のものはこのようにすでに3種類あるのだが,
外国の事情はどうなっているのだろう?
どなたかご存じの方がいたら,お教えいただけるとうれしい。
コレクターというのは(特に私だが),
集めたものを眺めては悦に入る。
それぞれの辞典にはたくさんの問題が収録されていて,
そのすべてに目を通すには膨大な時間がかかるので,
なかなかできそうにない(特に岩田先生のものは!)。
しかしときどきパラパラとめくっては,
目についた問題を考えるのは,
とても楽しい時間である。