理学部の1年生は,普通微分積分と線形代数を勉強します。
私も必修科目である二つを受講しました。
で,線形代数はI先生担当。
教科書は
有馬哲 著,「線形代数入門」,東京図書
でした。
当時はまだ佐武先生の「線形代数学」がよく教科書として使われていましたが,
I先生は代数学がご専門,ということもあってか,
また,ブルバキの影響もあってか,
この本を教科書に指定されたようでした。
1番最初の授業のときに
「君たちの多くは教員になると思うけど,
もしそうなら,4年間しっかり数学を勉強しておいてくださいね」
と言われ,「入ったばかりなのにそんなことを言われても」と
少し戸惑ったのを覚えています。
もっとも大学を卒業してから数年後に教員になったとき,
I先生のこの言葉が記憶から蘇り,
「たしかにそのとおりだった」
と後で理解しました。
佐武先生の本は初め数ベクトルから始まっていたかと思いますが,
有馬先生の本,I先生の講義は初めから公理的に線形空間を定義し,
理論を展開していくものでした。
高校時代に読んでいた矢野先生の本には,
何度もユークリッド幾何学の公理の話が出てきていて,
公理的な構成については少し慣れていたので,
「やっぱり大学の授業は違うなぁ」
とお上りさん的な感想を持ちながら聞いていました。
(高校の2年の教科書「数学IIB」には「公理的構成」という
タイトルの章があったものです。
でも(私が通っていた学校も含めて)多くの高校では扱われなかったようです)
講義のときにはよくわからないこともたくさんありましたが,
1年の終わりの春休みに授業のノートを作りなおしていたら,
すっと頭に入ってきて,
「うん,面白い」
と思ったものです。