去年の春に角川文庫になっていた横溝の作品をまとめ買いした。
で,その当時の刊行順にポツポツ読んでいる。
「八つ墓村」,「悪魔の手毬唄」,「獄門島」などは
ちょうど角川が横溝作品を次々に映画化していた頃だったので,
文庫で読んでいた。
その角川が,横溝の作品をほとんど文庫化していたことは
去年の春まで知らなかった。
横溝といえば,上に挙げた三つの他,
金田一耕助が探偵役の,オドロオドロしい作品が代表作だが,
これらの作品を書く前に時代物を書いていたことは知らなかった。
で,角川文庫を順番に読んでいって,
No.19 となっているのが「髑髏検校」というタイトルの本。
それには「髑髏検校」と表題にした「神変稲妻車」の二作品が
収められていていずれも時代物。
「髑髏検校」の方は,「吸血鬼カミーラ」や「ドラキュラ」といった
作品がまだ邦訳されていないころに翻案とでもいうのだろうか,
(私は「ドラキュラ」などを読んでいないので比べられないが,
巻末の中島氏による解説によると)それらの舞台を江戸に移した
もの。
こっちはちょっと物足りなかったが,
「神変稲妻車」のほうは面白かった。
時代小説の中でも,俗にいう「伝奇物」と言っていいだろう。
普通の登場人物に加えて妖術使いなどのようなものも登場する。
1章が2,3ページほどで次々と場面が変わる。
登場人物も多い。
それらが(じゃっかんご都合主義のところもある感じだが)
善悪入り交じってストーリーが展開する。
とにかく展開が早く,読んでいて飽きなかった。
横溝はストーリーテラーと呼ばれることが多かったそうだが,
さもありなん,と感じた。